「今年(2014年)はいろんなミュージシャンと出会った年なんです」という話をしていて。TKくんも「今年最後の出会いなのでタイトルを“Last Eye”にしました」ということだったので、その言葉は入れたほうがいいなって思いましたね。
(安藤裕子)

——「Last Eye」はもともと、去年の12月23日に恵比寿ガーデンホールで行われた「TK from 凛として時雨」と「安藤裕子」の2マンライブで披露された楽曲なんですよね。

TK そうですね。その後、僕ひとりだけで何度か歌わせてもらっているんですけど、ふたりで披露したのはそのときが最初で最後……いや、最後じゃないかもしれないですね(笑)。

安藤裕子 (笑)。


——そもそも、どうしてTKさんと安藤裕子さんが2マンライブをやることになったんですか?

TK ライブを企画したHOT STUFF側から「誰か一緒にやりたい人はいますか?」という話があって。ソロとしてライブをやるときは、凛として時雨ではやれなかった人とも一緒にやってみたいなという気持ちもあって、安藤裕子さんにオファーさせていただいたんです。僕はあまりフェスなどにも出ないので、交流のある女性アーティストはほとんどいないんですよ。だから去年のライブのときに「初めまして」だったんですけど、ありがたいことに受けていただいて。



安藤 私も去年まで、他のミュージシャンとほとんど交流がなかったんです。デビューして12年なるんですけど、丸10年は皆無だったんですよね。ホントに知り合いすらいない状態で、フェスとかに出させてもらったときも「スタッフと乾杯して、お肉だけ取ってきて帰る」みたいな感じで(笑)。

TK (笑)。

安藤 同世代のミュージシャンの知り合いもまったくなかったんですけど、去年「“音霊”にスキマスイッチと一緒に出ませんか」という話をいただいて。自分のツアーにも大塚 愛さん、笹川美和さんが来てくれて、一緒にごはんを食べる機会があったりして、それが楽しかったんですよね。去年は「人と会うのもいいな」と思っていた年だったから、TKくんからのお誘いも嬉しくて。しかも「曲を作りませんか?」って言ってくれたんですよね。「僕が曲を作るので、歌詞を書いてください」って。同じ舞台に立つだけでも共有感はあるけど、やっぱり距離が残るじゃないですか。だから、一緒に曲を作ってみるのはいいなって。

TK 他のアーティストの方と一緒に何かをやることって、僕もあんまりなかったんですよね。バンドで2マンをやるときも「アンコールでセッション」みたいなことはないので。アンコール自体がないっていうのもあるんですけどね(笑)。だけど安藤裕子さんとのライブのときは、自分が弾き語りだったというのもあるし、一緒に曲を作って歌うのも新しい試みでおもしろいのかなって。

安藤 男性と一緒に歌うとなると、キーが違うから、どちらかが無理をしないと難しい場合が多いんです。でも、TKくんはキーが高くて、女性と合うんですよね。

TK (音域は)どれくらいまでですか?ということも聞いたんですが、ちょうど自分と同じくらいだったんですよね。僕もソロのときは歌い方が違っていたりするし。バンドのときは声を張ることが多いけど、ソロのときはウィスパーで歌う部分も多いんです。

安藤 そこからいきなり絶叫したりね。

TK “PAさん泣かせ”ですね(笑)。


——制作としては、まずTKさんが楽曲のデモを作ったんですか?

TK そうですね。安藤さんもお忙しい時期だったし、スタジオで一緒に何かをやる時間はなかったので、音だけでやり取りさせてもらって。

安藤 メールで音をもらって、それに歌詞を付けて送り返して。私は機械がぜんぜん出来ないから、曲に合わせて歌ったものをケータイのボイスメモで録ったんですけどね(笑)。

TK タイトルと一部分の歌詞は僕が決めたんですが、あとはお任せしました。曲をお渡ししたのが、イベントの近々だったんですよ。僕は歌詞に時間がかかるほうだから、「怒られるかもしれないな」というタイミングだったんですけど(笑)、安藤さんは2時間くらいで歌詞を書いたっていう。本当にすぐに返してくれたんですよね。

安藤 その前のメールのやりとりで「今年(2014年)はいろんなミュージシャンと出会った年なんです」という話はをしていて。TKくんも「今年最後の出会いなのでタイトルを“Last Eye”にしました」ということだったので、その言葉は入れたほうがいいなって思いましたね。私、そのメロディに対してシンパシーがあると(歌詞を書くのも)早いんですよ。「Last Eye」のメロディには距離を感じなかったし、書きやすかったですね。それがTKくんの世界にある言葉かどうかは別にして、メロディのなかに垣間見える風景は、すごく歌詞にしやすかったので。

自分の曲や言葉にも、孤独、寂しさが出ているほうだと思っていて。自分はその果てにいるような気がしていたんですね。音や言葉によって、これ以上の孤独を感じさせることはないだろうなって。でも…(TK)

——安藤さんの歌詞はどんな印象でした?



TK 自分の曲や言葉にも、孤独、寂しさが出ているほうだと思っていて。自分はこの曲の原型を作った時に、既に果てにいるような気がしていたんですね。音や言葉によって、これ以上の孤独を感じさせることはないだろうなって。でも「Last Eye」の歌詞を見たときに、その先にさらに道が出来た感じがあったんです。僕が曲を作って、歌詞をお願いするということが初めてだったこともあるし、曲が自分の範囲で収まらず、見たことがない宇宙にまで飛ばされたような感覚があって。

安藤 ふふふ(笑)。

TK 自分の理解に収まらないこともすごく多くて、歌っていても、毎回違った意味や物語を感じたりして。「近いのに、わからない」という感覚はいままでになかったし、すごく刺激的でした。


——お互いのメロディ、言葉によってシンパシーが生まれたというか。

安藤 そうですね。どうあがいても、せっつかれても書けないときもあるので。楽曲を提供していただいて「歌詞だけ書いてください」ということは何度かあるんですけど、作り手同士同志の距離感って、会って話したことがあるとかではなく、もともと持っているものが大きいと思うんです。その距離が近ければ、歌詞に時間はかからないんですよね。最短で5分とか。

TK すごい。1年かかることとか、ないですか?

安藤 1年かかった場合、諦めます(笑)。そんなに待てないんですよね、逆に。彫刻に例えると、木を見たときに「こういう顔が見える」って思わないと彫れないタイプというか。

TK 僕は顏が見えないことのほうが多いし、ずっと彫り続けるタイプですね。だから結果的に時間がかかるんですけどね。どこか一部だけ書いて、そのまま置いておくこともあるし。

安藤 ライブの後もメールでやりとりしていたんですけど、「タイプが違うな」ということがけっこうあって。アルバムの進行とかも「え、もうやってるんですか?」とか(笑)。

TK 僕が遅いんですけどね(笑)。さっきの彫刻でいうと、整えられる部分、精度を上げられる部分があれば、ずっとやりたいほうなので。マスタリングの当日、歌を録り直したりすることもあるし。

安藤 えー?!

TK (笑)まあ、それは自分で録れる環境があるからなんですけどね。


——「Last Eye」をライブで歌ったときの手応えはどうでしたか?



安藤 緊張してましたけど、音像はすごく気持ちよかったですね。当日「ここはハモってみませんか」って打ち合わせしてたら、TKくんが「ハモったりしたことないから、わからない」って言ってて。

TK ハモリに慣れてないんです(笑)。バンドで「ここだけ一瞬ハモる」みたいなことはたまにあるんですけど、そういうときは勢いでやっちゃうので。「3度上で」とか、ちゃんとしたハモリはどうやっていいかわからないんです。

安藤 「ハモられることに慣れてない」ということにもシンパシー感がありましたね。他人と混ざれない感じというか。

TK ステージでセッションとかもないんですか?

安藤 なかったんですよ。たとえばCurly Giraffeが女の女性シンガーを集めて一夜限りのライブをやるとか、そういう経験があるんですけど。他のミュージシャンと一緒に何かやるというのは、それこそ去年のスキマスイッチが初めてだったので。

TK 僕もほぼ初めてだったので、ライブのときは緊張しましたね。ピアノの弾き語りとウッドベース、ピアノという編成だったんですけど、いつもの僕のスタイルとは全く違いますし。さらに安藤さんの伴奏をするという場面もあって…。

安藤 TKくんは私の後ろでピアノを弾いてくれてたんだけど、緊張が伝わってきましたね。

TK 本番はすごくいい緊張感だったし、いいテイクになりましたね。

安藤 うん。時間がないなかで作ったわりにすごく共感性が高かったし、お客さんも聴いてすぐに忘れるような印象ではなかったんですよね。「お遊びで、賑やかしでやりました」という感じではなくて、聴いてくれた人もしっかり覚えてくれたんじゃないかなって。

TK セッションって「その瞬間だけ音楽が鳴って、その場で消えてしまう」という感じがしていて。だから、たとえその日だけになったとしても、何か強烈に残るものにしたくて。何かのカバーとかではなくて、ちゃんと作って、その日を締めくくりたかったんです。「Last Eye」をいつかリリースするかもしれないなんて思ってなかったけど、次の年になっても「あの曲、また聴きたい」と思ってもらえるような作品というか。単なるセッションよりも、その瞬間を作品にしたかったんですよね。

安藤 まさにそういうことですよね。一夜限りにするには惜しい作品だなって。だから「人様に曲を書いてもらおう」という話になったときも、すぐにTKくんに作ってほしいなって思って。私としても勝手な好感、勝手な共感もあったし。そしたら「“Last Eye”を歌ってもらえますか?」と言ってくれて「え、いいんですか?」って。

TK もともとはふたりで歌うことをイメージして作ったんですけど、さっき言ってた安藤さんがケータイに録ったデモもすごく強烈だったんですよ。「あ、間違えた」みたいな声も入っているドキュメンタリー性の高いデモだったんですけど(笑)、ひとりで歌ってるのもすごく良かったし、聴いてくれる人にも響くんじゃないかなって。

TKくんは孤立した宇宙ステーションみたいなところにいて、大きな窓から、もう滅びてしまった地球を毎日毎日眺めているんです。非常に愛した恋人もいたんだけど、もちろん彼女も死んでいて。(安藤裕子)

——完成した音源を聴いたときの印象はどうでした?

TK また全然違う感じでしたね。ライブでやったバージョンは“圧迫された部屋”というニュアンスがあったんですけど、その感じも残しつつ、いろんなものが広がって、更に大きくなってる感覚があって。本来デモから完成音源への変化ってある程度イメージの範囲内で収まることが多いんです。今回は山本隆二さんがアレンジしてくださったんですが、僕のデモのニュアンスを保ちつつ、まるで音で映画を見てるかの様な世界観に化けたんです。それはいままで感じたことがない感覚でしたね。

安藤 いっしょに歌ったときのニュアンス、ベーシックなところは変えないでほしい、というお願いはしてたんですよね、山本くんに。そこから弦が入ったりしていくなかで、曲が狂気を持ちながら広がっていって。レコーディングしながら「これは壮大な曲になるな」ってワクワクしましたね。歌とかも、増幅していく感じが手に取るようにわかったんですよね。


——レコーディングが進むにつれて、楽曲のスケール感やビジョンが広がっていったと。

安藤 そうですね。もともと“男性の孤独な風景”というイメージが浮かんでいたんですよ。最初は失恋というか“恋人がいなくなった部屋の風景”だったかもしれないけど、すべての音を録り終えたら、その風景が変わったんです。私の頭のなかで勝手にPVを作ってたんですけど(笑)、それに出ているのはTKくんだけで。

TK 歌わないのに(笑)。

安藤 主人公が男性だからね。TKくんは孤立した宇宙ステーションみたいなところにいて、大きな窓から、もう滅びてしまった地球を毎日毎日眺めているんです。非常に愛した恋人もいたんだけど、もちろん彼女も死んでいて。つまり、彼は本当の孤独なんですね。“もともと友達がいなかった”という孤独と“本当に幸せだったのに、それが手からこぼれてしまった”という孤独はぜんぜん違うと思うけど、この場合は後者の孤独ですね。これは私の勝手な想像ですけど、宇宙空間は星もキレイだろうし、空気が澄んでいて、音もなくて。そういう場所で狂気と紙一重のところで生きているっていう。後半、ティンパニーが鳴っているところあたりでは気がふれてしまって、TKくんはいろんなものを投げつけ始めるんです。

最後はTKくんが倒れていて、そのうえをいろんなものが舞っていて。


TK すごいPVですね(笑)。安藤さんの歌にも、一緒に歌ったときとはまったく違う印象があって。歌い出しから世界観が違ったし、こっちに訴えかけてくる感じがすごくあったんです。きっと生の音に差し代わっていく過程で新たな生命が宿るというか、安藤さんのスイッチが入ったんじゃないのかなって。頭から鬼気迫るものがあって、最初から最後までゾクゾクしましたね。


——本当に素晴らしいコラボレーションになったと思います。“他のアーティストと交流が少ない”という共通点が上手く作用したのかもしれないですね。

TK そういうことを絶っていたわけではないんですけどね(笑)。いっしょにライブをやったバンドとは仲良くなりますし。でも、例えばフェスに出た時に全部の楽屋にイエーイ!って行ける感じではないです(笑)。

安藤 バンドの方々って世代が近いと自然に活動範囲も近くなるというか、“みんな友達なんだろうな”って勝手に思ってたんですけどね。

TK 仲良くなるとまた一緒にやりたくなるし、それを繰り返すことでもっと仲良くなることもあるんですけど、僕達はイベント出演がそこまで多くない方なので交流は控えめかもしれません…(笑)。個人的にはコミュニケーションを取るのは好きなんですけどね。

安藤 そう、「話してみたら意外と朗らかだな」という印象なんですよね。バンドのイメージとは違って、気さくで朗らかというか。

TK 安藤さんも、そういう感じじゃないですか?

安藤 そうかもしれないですね。世間に出て着いる私のイメージは、実際の自分とは遠いと思います。バラードが世に出がちだったりするんですけど、私は非常にがさつなので(笑)。いまのほうが社会性もあるし、優しい感じだと思いますね。前はヤバかったんですよ。尖ってたし、すぐ泣いてたので(笑)。


——安藤さんの年末のライブ(「安藤裕子 Premium Live 2015 ~Last Eye~」)のタイトルも「Last Eye」ですね。



安藤 そうですね。この曲が出来たときも自分のなかですごく盛り上がっていたし、ちょうどライブのタイトルを決める時期と重なっていたので。TKくんに「今年最後の出会い」と言ってもらったのがすごく記憶に残ってたんですよね。ライブに来てくださるみなさんに会えるのも今年(2015年)最後だなって思ったし、「この曲の名前をいただいていいかしら」って。